もしあの頃結婚していたら、なんて思わないことはない。 希望の部署に異動になり、仕事が新鮮で面白く、若さと美しさに自負があった20代前半の自分は、文字通り怖いものなしだった。 友達の紹介で出会ったNとは、向こうの一目惚れでお付き合いが始まった。 …
昨日の取引先とのランチミーティングは、出だし好調で。 100%納得いくものでは到底なかったにせよ、いい関係は築けたと思うし、最初にしてはまぁまぁな手応えだったかな、と。 これで今後も食っていこうと思うなら、こんなものではないだろう。 未だ独身の自…
明日は、異動の内示と飲み会。 一番年上で独り身だと、飲み会が何より堪える。 後輩たちが気を遣って何にも触れないようにしてくれる感じは、今に始まったことではない。 今回もまた「言わないだけで相手がいそう」感を漂わせて、とにかく耐えるのだ。2時間…
約3年ぶりにこの女性専用旅館に泊まる。 1泊4万も払って一人で泊まりに来る独身女は、側からどう見えるのだろう。 5〜6人の若い女子グループの視線が気になる。 隣で大声でくっちゃべる品のない女でさえ、その話の内容から夫がいるようだ。 暖炉の間で座って…
出会いはマッチングアプリだった。 彼とはメッセージのやり取りをし始めてすぐ意気投合し、まずは会ってみましょうということになった。 忘れもしない、年の瀬のことである。 札幌駅のスタバはかろうじて営業していて、私はソイラテを頼んだ。彼は普通のコー…
アプリの41歳バツイチIさんと大通駅1番出口で待ち合わせをしている。 約束の時間ちょうどくらいに落ち合って、挨拶をする。 当たり障りのない会話をしながら、店までの道を歩く。 想像より若干背は低いけれど、服装や身なりの全体感は決して悪くない。 予約…
YouTubeを見ながら、珍しく寝落ちしてしまっていたようだ。 土曜の午後5時。 また何か夢を見ていたような気がする。 桜の花びらが舞い散るどこか田舎の坂道を車で下っている。 自分は助手席に乗っていた。 運転手の顔は見えないが、何か会話をぽつぽつと交わ…
最も距離を保ちたかった同期との関係。 もう10年前、狭いアパートの一室で。 Yはイケメンなのに、昔から少し変わっていて、目立つ存在だった。 そしてなぜか私のことをひどく気に入り、時に小馬鹿にしては、時に口説いた。 いつしか二人だけでこっそり逢瀬を…
とてつもなく長い夢を見ていたような気がする。 薄緑色のカーテンから差し込む陽の光が眩しい。 スマホを見ると、11:00。また眠りすぎてしまったようだ。 ぼんやりと霞がかった記憶の奥に、ふかふかのベッドの感触と、"誰か"の温もりが残る。 とても満たされ…